年末にはこの映画をみよう第二弾(エレファント)

  • エレファント。2003年のカンヌ・パルムドール・監督賞を受賞。監督はマイプライベートアイダホ(My own private Idaho)やキッズ(KIDS)のガス・ヴァンサント。デイヴィッド・リンチと並んで好きな監督です。以下レビュー。
  • エレファントのモチーフはアメリカのある有名な少年犯罪である。現実に起こった事件を素材としたドキュメンタリー的な側面がある。しかし、この映画で本当に注目すべきなのは、心理的な内面を、セリフや設定ではなく、しぐさ、空気、光景、音楽で表現することに注力したことだろう。その試みは見事に成功し、映像はひたすら美しい。あまり予備知識を持たずにこの映画を見たほうがよい、と僕は思う。だからこれから書く文章がこの映画をなるべく損ねることのないように、書こう。
  • 演出は実験的だ。10人ほどの少年少女がクローズアップされ、それぞれの主観で日々の生活が描かれている。長回しで一人の少年をずっと追いかけ、偶然すれ違った別の少年にふとカメラは切り替わり、また長回しが始まる。映像のほとんどの部分が、この繰り返しで作られていると言って良い。だから、さほど盛り上がらない人の話を長いこと聞いているのが苦手は人は、この映画はひょっとしたらつまらないかもしれない。
  • ただ、この映画には圧倒的に溢れる詩情がある。美しい空の広がる変哲もない風景を少年達が通過するだけで、僕らはその背後に自分を移入し、意味を見出すことができる。異性関係、容姿へのコンプレックス、漠然とした将来への夢、面倒な家族関係など、高校生が抱える悩みはいつの世も変わらないようだ。外国の映画でこのように感じることができたのは、僕としてはちょっと珍しいことのように思う。そして映画の進行とともに、長回しの下で一貫していたように見える時間は少しずつゆがみ始め、物語は終局に向かう。
  • 本作には二回のキスシーンがある。一度目のキスシーンと二度目のキスシーン。どちらも悲しみを伴うシーンだが、二人の少年が歩んだ道の違いをよく表す象徴的なシーンだと思う。見終えた後で、この二つのシーンを反芻すると、やりきれなさがこみ上げて仕方がない。キスも知らない17歳が、と。


See official web page,http://www.elephant-movie.com/elep_index.htm,
ガス・ヴァン・サント - Wikipedia
コロンバイン高校銃乱射事件 - Wikipedia(ネタバレ注意),
and also エレファント デラックス版 / ジョン・ロビンソン - DVDレンタル ぽすれん,

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  • 明日は今年の第一位。なんか全部暗めの作品になりそうだけど。