年末にはこの映画をみよう第三弾(父、帰る)
- 父、帰る。2003年ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞・新人監督賞受賞。監督アンドレイ・ズギャビンツェフ(ロシア)。以下、レビュー。
- 12年前に会ったきりの父親。唯一の手がかりは聖書に挟み込まれた不鮮明なモノクロ写真のみ。反抗期の弟と思春期の兄と厳格な父3人のロードムービー。
- 天候と空の光の色が美しい。そしてしん・・・とした静けさがある。朝、昼、午後、夕方、夜、晴、薄曇、曇り、雨、土砂降り。その時間その天気が持つウクライナの光を敏感に捉え、フレームに入るものすべてに丁寧に気を使い、撮影されたのだと思う。
- 喧嘩、空腹、押し付け、わがまま、愛情への渇望と葛藤、不満と反発。親子の旅に立ち現れては消え、繰り返し増幅されるのは、合理的な言葉を持たない父親の押し付けと、不合理にもそれに従わなければならない息子の反発だ。そしてそれは父殺し願望に高まる。原始的な感情のぶれと増幅を丹念に描写する映像をじっと見ているうちに、まだ僕が漢字をあまり読めなかったころの親に対する感情をとてもたくさん思い出させてくれた。「父、帰る」で描かれるのは、暗いながらも、まっとうできっぱりとしたステレオタイプの親子関係である。
- この映画では、どのシーンをとっても刺激的だったり派手だったりする仕掛けはみあたらない。引き込まれて目が離せなくなるのは、見に覚えがある緊迫した心理状態のたゆまざる変化と、ノイズのないクリアで美しい映像の組み合わせが見事なためだろう。音楽、映像、ストーリー、そしてテンポがざっくりと、しかし、きっちりとはまったパズルのようだ。傑作。
- そしてこの映画の重要な点は、全体の物語(親子の旅の物語)をまるごと相対化する外部の物語の存在である。聖書、一週間、パンとワイン、エディプスコンプレックス、魚。撮影後すぐ溺死したといわれている兄役の方に冥福をお祈りします。
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- 追記:この映画が今年の一位でした。見終わった後はしばし呆然としました。ラストには唖然とします。そしてとにかく絵が美しいです。まず主人公の少年の反抗的な表情が美しいです。
- 森とか光の撮り方がいかにもロシアのアート映画です。タルコフスキー監督のストーカーを現代的にしたような。タルコフスキーの時代よりは機材も進化しているので映像がシャープで見ていて気持ちがいいし、このフレーム、この光!ってとこでばっちりきまってます。かといってハリウッド映画のようにあざとくはないし。
- 女はあまり出てこないので母性とエロスはちらり程度です。でもそのちらりがなかなかw そして!村上春樹ファンは必見です。海辺のカフカとは世界観がかなり一致します。ジョニーウォーカーとかは出てきませんが、エディプスコンプレクス繋がりとか、XXXXXXとか。
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