年末にはこの映画をみよう第一弾(ウィスキー)

  • 中米の街並みは古びているが、単に古くさいのとは少し違うように思う。印象の薄い夢のような、明度だけが高くて彩度が低いカラー写真のような、独特の味わいと光を持っている。ウィスキーの主役、靴下工場のオヤジとその従業員の女は、偽装の夫婦としてブラジルからやってきた陽気で若干あつかましいオヤジの弟をウルグアイに迎えるところからストーリーは始まる。
  • ラテンの人たちはかしましく愛の言葉とジョークを連発する人ばかりのように思える。しかし、光が単独では存在できないように、感情を強烈に放出する人たちの周囲には、調子の良い言葉にもっともらしく相槌を打ったり、眉をひそめたりすることを主なリアクションとする、善良でおとなしい人々が生きている。善良な人々が建前ではない本音の感情を表情に出すとき、それは決して押し付けがましいものではない。ほんのわずかな痕跡が表れるだけだ。うっかりと感情が顔ににじみ、それが明確になる前に急いで引っ込めたけれど、間に合わなかったわずかな分量だけがつい顔に出てしまったかのようだ。そしてその痕跡はウルグアイの淡い空気に散ってゆく。
  • ウィスキーの偽装夫婦は、その個性的な風貌で、善良でしみじみとした感情と愛情を、わずかな表情の痕跡のみで繋いでゆく。過剰で刺激的で、どこを切り取ってもスチル写真として成立するような隙のないハリウッド映画とは違う、のんびりたゆたう時間と空気を楽しむことができるはずだ。彼らがしゃべったり微笑んだりする映像を見るのは、ただそれだけでとても安らぐ。ウィスキーはそんな良心的な映画である。

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  • さっぱりブログを書く暇がないので、今年書き溜めた映画レビューの中から、2006年ベスト3を選んでのっけます。2006年封切、といういう意味ではなくて、あくまで、俺が今年見た、という独りよがりなベスト3ですw 第二位はまた明日。