宇宙からのおたより

  • SETI計画では宇宙に向けて「ここには知的生命体がいますよ」というようなことを知らせるために,宇宙に向けて素数の列を送っているそうだ.宇宙人はなんと答えれば自分が知的生命体であることを証明できるんだろうか.暗号業界の人は,素数に並々ならぬ思い入れがあるから,そういう話で盛り上がった.
  • これは要するに人間が宇宙人を相手にしたチューリングテストを仕掛けているのである.チューリングテストは,機械には解けて,人には解けない問題を出すことで,対話している相手が人間であることを証明する方法だ.前にも書いたけれど,日常的に良く見るチューリングテストは,MSNなんかのアカウントをとる時にぐにゃぐにゃと変換された文字画像を読み取ってそれをキーボード入力するヤツだ.でもよく考えるとこのチューリングテストは江戸時代の日本人にはきっと解けない.でも江戸時代の人が現代人より知的ではないかというと,そんなことは無いような気がする.このテストは別に対話相手が本質的に人であるかどうかを判定してるわけではなくて,IT時代の常識があるかどうかを判定しているだけだ.
  • 話を戻すと, SETIの人は宇宙人にどんな答えを期待しているのだろうか.n番目の素数まで送信した後で,n+1番目の素数が帰ってくれば素数信号が届いた先には知的な宇宙人がいるのだろうか?でもひょっとしたら宇宙のどこかには受信した素数信号の次の素数をエコーする物理的機構を持つ謎の素数星雲があっても不思議はない.それでも星雲は別に知的生命体じゃない.
  • 今,僕らは二つの巨大素数pとqの積pqを因数分解することができない.できてないからRSAが使え,SSLが使え,httpsが使える.また,今,僕らはNP困難な問題を多項式時間で解くことができない. できてないからn地点を巡回する最短経路を求めることはできないし,n個の価値の異なる荷物をもっともお得な組み合わせで有限なかばんに入れて逃げ出すこともできない.
  • もし脳みそが量子コンピュータ的にできている宇宙人がいたら,こんな問題は暗算であっさり解いてしまうだろうから,宇宙的チューリングテストとして巨大素数の積を送ってくるかもしれないし,NP困難な問題のインスタンスを送ってくるかも知れない.そしてその宇宙的チューリングテストに僕らは答えることができないから,奴らは「銀河系あたりには知的生命体いねえみてえだから吹き飛ばしてadf09wrolkjs*1でも作るか」とか言い出すかも知れない.そしたら人類の一貫の終わりである.ニューロン脳とシリコン計算機しか持たない人類がそんな日のためにできることは,物理と情報の研究者にがんばってもらって量子コンピュータを作るか,天体学者にがんばってもらって謎の素因数分解星雲やナップザック星雲を見つけてもらうしかないな.それにしても今日はよく妄想したなぁ・・・

*1:なにか宇宙的にものすごい施設