技術者はユーザイノベーションの悪夢を見るか?(1)
- 2006.1.27付日経新聞の経済教室に掲載された「先端ユーザーに学べ」という記事が気になった。著者はMITのエリック・フォン・ヒッペル教授。以下は引用。
イノベーションが民主化しつつある。これは、生産財であれ消費財であれ、ユーザー自身がイノベーションを手がけるようになってきたという意味である。この変化は、製造業にとっては重大は脅威だ。製造業が革新的な製品開発に取り組むのはユーザーのためである。それなのに、ユーザーが自分で開発するようになったら、どう対応すればよいのか。
- 彼の挙げるユーザーイノベーションの例は、ユーザーの開発によるスケートボード・ウィンドサーフィン・スノーボード、医師の開発による人工心肺、リードユーザによるショートメッセージ(携帯電話)、Voice over IP(VoIP)などである。ユーザーイノベーションがメーカやベンダにとってどんな損失をもたらすか、に関する議論はないが、推測するに、イノベーションの主導権がユーザーに移行する反面、メーカ(あるいはベンダ)単独のイノベーションには限界が見え、メーカがリリースする製品やサービスから魅力あるイノベーションが失われつつある、といった絶対的な競争力低下に関する危機感に発しているのだろう。
- ヒッペル教授のいう、メーカのユーザーイノベーションへの対処は、タイトルからも明らかではあるが、以下の二つである。
- ユーザーイノベーションの加速の一例として、カスタムIC設計の低コスト化・簡単化を上げている。かつて数万〜数十万ドルがかかり、なおかつ専門技術者でなければ不可能だったカスタムIC開発が、設計ソフトを利用することにより個人でも50ドル程度で比較的容易に手にすることができ、ユーザーイノベーションの成立に貢献しているとしている。