カラコルムハイウェイの残尿感
- 中国へ北京から入って、陸路で一路西を目指そうと思ったら、新疆ウイグル自治区のフンジュラーブ峠を超えてパキスタンに降りるか、ゴルムドか成都からチベット自治区を経て、ジャンムー(ネパール)に降りるか、どちらしかないです。雲南からラオスに降りて、タイからミャンマー経由でバングラに抜けりゃいいべ、と思うかもしれないけれどそれは無理。ミャンマーのイミグレは決して陸路越境を許してくれない。茶パス(外交官用)持って行ったってきっと無理。アウンサンスーチーさんに軍事政権を倒してもらわんと話が始まらんよあすこの国境は。
- ま、それはいいとして、とりあえず2002年の夏にカラコルムハイウェイでフンジュラーブ超えを志したことについて書きます。ジャンムールートを含めて、そのころにはアジア近辺の陸路国境はだいたいやり終わってたんだけど、このフンジェラーブルートはなんかこう、お得感に欠ける気がして避けてたんだよね。まずインドをすっとばさなきゃいけない。カシュガル越えたらフンザまで降りないといけないから華がないってのが気に食わない。それに旅の終着がピンディーってのもやる気が失せる。
- それでも一応ここを超えとかないと残尿感ありますよやっぱり。沢木耕太郎とかにムダに影響されて胸ときめかす若者とかいるじゃないですか。そういう若者には「おいちゃんも昔は陸路越境が好きでいろいろねえ・・・」とか武勇伝かましたいじゃないですか。でも「当然フンジュラーブも超えたんですよね〜〜」とか逆襲されたら普通に困る。「フンジェラーブも超えてねーのかよwwあのオッさん何気にモグリっス☆」とかいわれたら立ち直れないじゃないですか。
- そんな理由で(ではないのだけど)2002年の夏は高額なパキスタンエアの北京inイスラマバードoutのオープンジョーチケットを買ってフンジュラーブ超えを試みましたよ。チケットは14万円位しましたよ。アホみたいな値段ですよ。北京からウルムチ組んだりまでヘイコラ移動して、新疆をそれなりに楽しんで、あとはフンジェラーブ超えるだけっす〜とか言ってカシュガルで余裕かましてたら、がけ崩れ。ビバ!国☆境☆封☆鎖☆! 復旧の目途立たずですよ。もうアホかと。ついてないこと母を訪ねて三千里のマルコの如し。
- でも僕のなかの壊れてない部分を一番えぐってくれたのは、国境封鎖という事実ではないのです。そのころカシュガルの定番宿のチニワク賓館のドミトリーで同宿してた金井さんですよ。後の「旅行人ウルトラガイド アッサムとインド北東部」の著者ですよ。この方、なけなしの金をはたいてユーラシア大陸のどまんなかくんだりまで来て進退きわまっている僕に、「他人の不幸は蜜の味☆」とのたまいやがってくれました。本当にありがとうございましたw ま、昔一冊だけ書いた僕の本をなぜか読んでてくれたりしたんで許すけど。
- 結果的には、国境封鎖が解除されるのを待てずウルムチまで戻り、そっからイスラマまで飛んで帰りました。学生の身には偉い散財だった。400ドルくらいしたような記憶がある。
- それでもこの年の旅は遠縁つながりが重なった旅で、長く印象に残っている。
- 散々な思いをして帰ったら、学校が火事で焼けていた。2002年てのはそういう夏でした。あれから五年。今年は旅にいけやしない。今なお残尿感は残ったまま。やれやれですよ。
See also,
カラコルム・ハイウェイ - Wikipedia
- 金井さんの本はまごうかたなき名著です。あんなマイナーな(でもないけど)エリアを、旅行情報のみならず、地理・風土・歴史の観点から細大漏らさず紹介しています。読めばわくわくするはず。数寄者ならば。
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